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日本戦略研究所


 毒ガス弾訴訟の不可解な判決、連合国に没収された毒ガス弾事故に責任はない  

2003/10/01 (産経新聞朝刊) 【主張】

毒ガス弾訴訟 本当に日本の責任なのか

 旧日本軍が戦争中に持ち込んだ毒ガス弾で戦後、被害を受けた中国人が、損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は原告十三人に約一億九千万円を支払うよう国に命じた。

「国は(毒ガス弾の)調査や回収を中国政府に申し出ることが可能で、被害防止のための措置を委ねる作為義務も怠った」というのがその理由だが、果たしてそうか。不可解さが残る判決だった。

 わが国は、昭和二十年八月、連合国のポツダム宣言に基づいて無条件降伏した。

そのポツダム宣言は降伏の条件の一つとして、完全なる武装解除を挙げ、日本軍は毒ガス弾を含むすべての武器・弾薬、施設を没収された。

武器・弾薬、施設などについて、日本国、日本軍は所有権、管理権が及ばなくなったのである。

 一方で、平成七年四月に批准された化学兵器禁止条約は、「一九二五年以降、いずれかの国が他の国の領域内に、その国の同意を得ないで、遺棄した化学兵器を遺棄化学兵器という」という趣旨の定義をしている。

現在中国にある旧日本軍の毒ガス弾は、中国の同意を得ないで遺棄したものではなく、連合国に没収されたものであり、“遺棄化学弾”に該当するのかどうかは疑問がある。もし中国側が遺棄化学弾だというならば、それらが遺棄されたものであることを証明しなければならないだろう。

 こうした所有権も管理権もなくなった旧日本軍の毒ガス弾について、調査や回収を中国に申し出なかったのは国の怠慢、と裁判所がいうのは無理がある。

武装解除された旧日本軍の武器・弾薬の管理責任は一義的に中国側にあったと思われるからである。

 もし、裁判所のいうように被害防止のための作為義務があるとするなら、国共内戦で使用された旧日本軍の小銃弾についても、日本政府は責任を負わなければならないのだろうか。

 同じ内容の訴訟で、同じ東京地裁がことし五月に、毒ガスの遺棄、放置は違法としながらも、調査や回収は困難だったと、今回とは異なる判断を示していた。もともとは日本軍が持ち込んだ毒ガス弾について考える場合、国際法や国内法に照らして、どのように筋道だてればいいのか、今後の上級審で明確な判断を示してもらいたい。



  中国大陸の毒ガス弾について。だれが遺棄したのか? 西村真悟の時事通信2003/ 9/ 30

 昨日のニュースでどうしても注意を喚起しておきたいことがある。 中国大陸にある毒ガスのことである。

 昨日、東京地裁は、この毒ガス弾が旧日本軍の遺棄したものであると前提で、日本政府に一億九千万円の支払命令を出した(原告請求は、二億円)。

 この判決においては、事実認定の他、日本民法の不法行為責任追及が二十年の経過でできなくなる除斥期間を如何にクリアーしたかの問題や日中友好条約による請求権放棄があるのに何故いまさら賠償かという法理論の問題がある。

   しかしここでは、法の理論の問題ではなく、 『事実認定』だけに焦点を当てて重大な疑問を提起しておく必要がある。つまり、果たして 「中国大陸にある毒ガス弾は、旧日本軍が放棄・遺棄したものかどうか」である。

 昭和二十年八月十五日の天皇陛下の玉音放送のとき、 中国大陸には、百万の完全武装の無傷のシナ派遣軍がいた。 満州には五十万人の関東軍がいた。 そして、シナ派遣軍は蒋介石政府に対して降伏し武装解除せよという大本営命令により、整然と降伏し武装解除して、その装備を蒋介石国民党政府に提出したのである。  関東軍は、ソビエト軍に降伏し武装解除した。但し、一部には共産党軍に降伏し武装解除した部隊もある。

   さて、当時の満州を含む中国大陸は如何なる状態であったのか。 ソビエト軍、蒋介石国民党軍と毛沢東共産党軍やアメリカ軍さらに日本軍がいた。 そして、日本降伏とともに、国民党軍と共産党軍・ソビエト軍が雌雄を決する内乱再発の舞台が用意されたのである。

 したがって、日本の百万のシナ派遣軍と関東軍の装備を国民党か共産党かいずれが手にするかは、中国側にとって重大な関心事であり、そのために武装解除と装備引渡しは、極めて短時間に行われた。

 つまり、日本軍降伏時には、 中国大陸と満州には国民党軍、共産党軍、ソビエト軍、アメリカ軍、日本軍の毒ガス弾が存在したが、 日本軍の毒ガス弾は国民党軍と共産党軍とソビエト軍に引き渡されたのだ。

 このうち、日本軍のものはもちろん日本製であるが、国民党軍や共産党軍のものはアメリカ製やソビエト製やドイツ製やイギリス製のものがあったと思われる。大戦時の、アメリカやソビエトやイギリスの、国民党・共産党への支援、その前の、ドイツと国民党の関係を考えれば当然であろう。

 旧日本軍ほど装備や武器を正確に把握する軍隊はない。 中国やイギリスの軍隊が散布した地雷による戦後の事故は発生しても、日本軍が散布した地雷による事故は聞いたことがないはずだ。 日本軍は、地雷散布記録により全て回収したからである。

 私の事務所の佐々木秘書は、防衛研究所において、台湾派遣軍と海軍の作成した詳細な武器引渡しリストを入手したが、そこには当然に、 毒ガス弾を何発引き渡したと記載されていた。  他の日本軍も部隊ごとに詳細な武器引渡しリストを作成して整然と引き渡したと考えるのが合理的である。  では何故、他の多くの引渡しリストが日本にないのか。 その理由は、大陸に駐屯する陸軍においては、降伏・武装解除とともに中国側やソビエトの捕虜となり、部隊の所持する文書とともに、中国側・ソビエト側の管理下に入れられたからである。 したがって、これらの武器引渡し文書は、今も中国大陸内やシベリアに保管されていると考えられる。

 よって、結論。

 「中国大陸・満州内に存在する毒ガス弾・毒ガスが、旧日本軍が所持したもので、且つ旧日本軍がそのまま放棄・遺棄したものと認定できる資料はない。」  

 日本政府は、今一度、旧日本軍の作成した武器引渡しリストを中国当局が探し出して日本側に返還するように、中国側に要請すべきである。少なくとも閲覧を要求すべきである。

 しかるに、 中国内にある毒ガス弾・毒ガスが、全て旧日本軍が遺棄したものという前提で、日本が処理責任を負う旨安易に発言して、 事実認定を回避したのが、  村山富市内閣総理大臣と河野洋平外務大臣のコンビ であったのだ。

 さらにこのコンビは、 「戦後五十年謝罪決議」を強行して、中国側に媚びた。  自民党は、この決議を餌にして、  村山富市氏を総理に引っ張り挙げた。

 村山内閣は、 日本政治、いや、自民党政治の堕落の象徴である。 日本の為ではなく、私利の為に、総理大臣を選ぶのが、如何なる惨害を国に与えるか、ボツボツ、その結果が目に見え始めている。

 それの一つが、中国内の毒ガス弾被害への賠償問題である。

 総理大臣が、既に、誰が棄てたかに関わらず、中国内の毒ガス弾処理を約束している。  よって、国の代理人である法務検事は、誰が棄てた砲弾による被害かの事実を争わずに本件訴訟に臨んだのであろう。

 この種の訴訟においては、国側のこのような態度をこれ以上許してはならないのだ。

 このままでは、毒ガス弾が、ODAの替わりに、中国政府と中国人が、 ほぼ永久的に、日本からカネを引く道具にされかねない。  

 

日本戦略研究所

 
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